映画『燃ゆる女の肖像』ネタバレ感想

映画『燃ゆる女の肖像』ネタバレ感想|美しいラブロマンスと女性の生きづらさを描いた傑作
画像引用元:©Lilies Films

カンヌ国際映画祭 脚本賞&クィア・パルム賞を含む、世界各国の数々の賞を受賞した『燃ゆる女の肖像』。予告がとっても美しくて、心待ちにしていた映画が、ついに日本でも公開されました!

作品情報

燃ゆる女の肖像

原題:Portrait de la jeune fille en feu
上映時間:120分
公開:フランス:2019年|日本:2020年
監督&脚本:セリーヌ・シアマ
撮影:クレア・マトン
音楽:ジャン=バティスト・デ・ラウビエ
キャスト:
マリアンヌ 役(ノエミ・メルラン)
エロイーズ 役(アデル・エネル)
ソフィー 役(ルアナ・バイラミ)
エロイーズの母 役(ヴァレリア・ゴリノ)

映画『燃ゆる女の肖像』あらすじ

18世紀 フランス。画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は、貴族の娘のお見合い用の肖像画を依頼される。しかし、娘のエロイーズ(アデル・エネル)は、お見合いを拒み、肖像画を描かれることを拒否していた。そのため貴婦人からの依頼は、画家ということを隠してエロイーズに接近して、密かに見た記憶から肖像画を仕上げて欲しいというものだった…。

映画『燃ゆる女の肖像』見所・レビュー(ネタバレなし)

18世紀のフランスを舞台にしたラブストーリーなのですが、恋愛ものというだけでなく、女に生まれただけで選択肢が限られる苦悩も描かれていました。

・女性画家というだけで表立って作品を発表できず、描ける題材も絞られるマリアンヌ
・お見合い結婚を拒むエロイーズ
・召使いとして働くソフィー

女性ならでは悩みを抱えた3人が、肖像画を描くという限られた期間だけ、社会の生きづらさから離れて友情や愛情を育む姿は、とても可愛らしく、微笑ましく、愛おしい。この絵が完成してしまった後は…ということに目をつぶりさえすれば…。

絵画を題材にしている映画は、映像がとても美しいものが多いですが、『燃ゆる女の肖像』は、音もすごく印象的でした。

デッサンを書く音、海の波の音、炎がパチパチと燃える音…などなど、ASMR好きにはたまらないんじゃないかっていうくらい、音が感覚を刺激してきます。なので、全体的にはとても静かな映画なのですが、2人の感情に火がつく時、一気に燃え上がる炎の如く、激しい音楽が響き渡る!!!感情が音を通して伝わってくるような映画でした。

美しく、儚くて、切ない。普段、ラブロマンスにそんなに興味のない私でも、ずっしりと心に響くストーリー。家で観たら感じられないかもしれない音の効果は、本当に劇場で観てよかった!!と思える作品でした。

映画好きの年末恒例といえば年間ベスト。今作は、2020年公開作品の上位にされる方も多いのでは…?と睨んでおります。

映画『燃ゆる女の肖像』の評価
ストーリー
(4.0)
映像
(4.0)
ファッション
(4.0)
音楽
(4.0)
満足度
(4.0)

ここからは『燃ゆる女の肖像』のネタバレを含んでおりますので、まだ鑑賞されてない方はご注意ください。

映画『燃ゆる女の肖像』キャスト・登場人物

マリアンヌ(ノエミ・メルラン)

女性画家
演じるのは、フランス出身のノエミ・メルラン。なんか観たことあるなぁと思っていたら、『英雄は嘘がお好き(19)』で、次女のポリーヌを演じてた方ですね!黒髪がとても美しく、意志の強い目をしているので、見つめ合うシーンがすごく印象的でした。

エロイーズ(アデル・エネル)

お見合いを拒む貴族の娘
予告で観た時、フローレンス・ピューちゃんに似てるなと思ってたんですが、フランス出身の方でした。ずっと警戒して笑わないエロイーズが、次第に変わっていくのがとても魅力的でした。

ソフィー(ルアナ・バイラミ)

屋敷の召使い
主演2人がメインのストーリーかと思いきや、望まぬ妊娠をして、堕胎するシーンはかなり衝撃的…。

ソフィー自身が、なぜ妊娠して、どうして流産させることを選んだのかは映画の中には描かれないけど、女性が仕事をする上で選択せざるを得ない道だったんだろうなと思うととても切ない。でも、この出来事によって3人の関係性は一気に近づいていく。

演じているのはルアナ・バイラミさん。来年1月公開のカトリーヌ・ドヌーブ主演の映画『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』にも出演されてるとのこと。今作では意志の強い2人の間にピタッとハマった演技をされていたので、今後の作品も楽しみです!

映画『燃ゆる女の肖像』ネタバレあり感想

前半はかな〜〜り静かで、ASMRを聴いているような心地よさに、ブルターニュの美しい映像のヒーリング効果が高くって、うっかりウトウトしかけたんですが(同じ列にいたおじさん、寝息聞こえるくらい寝ていた。笑)、肖像画を描いていたことを明かして以降は、2人の燃え上がる心のように一気に面白くなりました!

中盤、3人が朗読する、ギリシア神話の『オルフェウス』。正直、私はオルフェウスについては詳しくないんですが、『千と千尋』や『ジョジョ4部』の杉本鈴美の所でも出てくる、『ここを出るまで決して振り返ってはいけない。振り返れば全てを失うことになる』的な話です。3人がこのお話について感想を述べ合うのですが、振り返ってしまうことに共感しているマリアンヌに対して、そんなの身勝手だというエロイーズ。この物語の感想が、ラストシーンにかなりキーになっていて、

終盤、扉を出ていく時に振り返ってしまうマリアンヌと、
オペラで再会して、多分気づいているのに振り返らず涙を貯めるエロイーズ

この2人の対比は、今年一番美しく、切ないシーンだったのではないでしょうか…。

素晴らしい映画でした。

この『オルフェウス』の朗読のシーンは、3人が特に楽しそうでとっても好きでした!こんな風にこの映画に対してあれこれ語ったらきっと楽しいだろうな。時代は違っても、現代の生きづらさにも通ずるものがあって、立場によって共感するキャラクターが違うと思うので、色々な意見を共有しあえるだろうなと思いました。